私たちは島根県益田市で
80年近く文房具店をしています。
戦後の混乱の時代、
高度成長で活気のある時代、
バブル崩壊で不況にあえぐ時代、
どんな時代でも
文房具は人々の暮らしの
役に立つと信じて
日々を営んできました。

時代は変わります。

便利で効率が良いものが
重視される時代。
私たちにとってデジタルなものは
既になくてはならない存在です。
生活必需品としての文房具は
時代の流れとともに
退場しつつあると感じています。

それでも私たちができることは何だろう。
手間ひまかかるアナログなものに
心惹かれるのはなぜだろう。

私たちはずっと考えてきました。

きっかけはワークショップでした。
もともとはものづくりの楽しさを
共有したいと思い始めたワークショップ。

時を忘れるほど集中して書いたり
作りながら家族や友人と盛り上がったり
大人も子どももみんな楽しそうな様子。
けれどそれだけではなく、
何か満たされたような空気。

アンケートでこんな声を
いただきました。
「とても豊かな時間になりました」
それを読んでハッと気づいたのです。

文房具がもたらすのは
心の満足なのではないか。
心の満足をもたらすものは
人それぞれだけど、
「書くこと」や「つくること」は
その一助になるのではないか、と。

心を満たす、
時間をつくる。

例えば
相手の喜ぶ顔を想いながら手紙を書いている時間
集中して無心で何かを作る時間
人には言えないことを
ノートに書き散らして自分を見つめ直す時間

こうした時間が
心に余裕を持たせたり、潤いを与えたり、
自分を大切にしていると実感させてくれたりします。

そして、そういう時間がそれぞれが思い描く
前向きな暮らしにつながれば
私たちはそれがとても嬉しいのです。

まだまだ道半ばの私たちです。
自分らしく前向きに暮らしたいと願う全ての人に
「書くこと」「つくること」の楽しさを見つめ
心を満たす時間をつくるために
私たちができることを模索していきたいと思います。

文華堂のあゆみ